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深夜零時

こういう夜は、お酒を飲む。

酒が特別好きなわけでもなければ沢山飲めるわけでもないが、美味しい酒は好きだ。ロックで飲むのがすごく好き。今くらいの時期になってしまえば、ベランダで晩酌もそこそこにいい気分だ。

 

最近また島本理生を読み返していて、私の好きな小説の冒頭に「子供の頃は毎日何かしらの絶望や発見があって、きっと自分は大人になる前に死んでしまうだろうという妙な確信を抱いていたことも今となっては笑い話だけど・・・」とあって、私も高校生の時には20歳になる前に死んでしまうのだろうと思っていた。

 

20歳になったらこの人生も何か変わるんじゃないかと思ってた。9月5日をもって、私の世界が大きく変わるんだと思ってた。もっと大人に、なっているはずだった。

だけど20歳になっても何も変わらなかった。19歳の私と、20歳の私のなにが違うんだろう。お酒が飲める歳になった。煙草が吸える歳になった。携帯の契約を自分でできるようになった。ある日を超えてからは成人だと言われ、未成年には戻れなくなる。

子供だった頃は、大人になったらものすごく自由になれると思っていた。何もかもから解き放たれて、なんでもできると、言葉通りの自由になれると、思ってた。

だけど私は何にも変わっていなくて、気の持ちようとしては子供のあの子らからなにも変わっていなくて、お母さんには変わらず甘えたいし、オムライスが晩御飯で出てきたら飛び跳ねる。なんら、変わらない。

 

依存する先がなければ、私は立っていられないのだと思う。昔、人に依存できるのならそれに越したことはないと言われたことがある。煙草に依存している今、果たして本当にそうだろうかと思う。ものに依存してしまうことより、人に依存してしまうことの方がよっぽど恐ろしくはないだろうか。ヒトとして、人間らしいという意味では健全なのかもしれないけれど。

 

昔の自分の軌跡を辿っていたら、苦しそうな私ばかりいた。大好きだった人を失って死んでしまいたかった頃の私、恋人の過去に苦しんで泣き通しだった頃の私、そんなのばっかりで、なんというか、がらんどうだなあと思った。

 

大好きだった人も、恋人の過去も、自分の左腕の傷も、まとめて大らかに愛せたらいいな。

 

今の自分を好きになりたい。

私は私のこと大好きだよって胸張って、一度でいいから言ってみたい。

 

 

きっと言えないだろうが。